前回からの引き続きの工程となります。 参照! → 修理その1:「包丁本体部分の成形」
1.柄の取り替え&塗装
今回の場合は、柄が割れていることや口輪がないことから、取り替えることにしました。
また、購入した柄は白木の状態なので、「ニス仕上げ」を行いました。
※「白木」・・・塗装などの表面処理がされていない地のままの木
■ホームセンター等でも購入できます。
柄の断面が、楕円のものと写真のように片側が角張っているものの2種類があります。
■片側が角張っている柄です。
「白木」部分 → 透明ニス仕上げ
包丁の差し込み部分 → エポキシ樹脂仕上げ
としました。
(1)木地、下地調整
塗装前に、木地調整(サンドパーパーがけ)を行います。
〔目的〕
・木の表面の凸凹や汚れを取り除く
・塗料の吸い込みが均一になるようにする
参考!『サンドペーパーの粗さと用途』
荒目 | 40番~100番 | 塗装や汚れをはがし、表面を平らにする |
中目 | 120番~240番 | 塗装前の下地調整 特に汚れていなければ中目で十分 |
細目 | 280番~800番 | 中塗り、上塗り等、塗料を塗り重ねる 際の下地調整 |
この柄の場合は、白木の状態でもきれいだったので
240番のサンドペーパーがけを行いました。
① 240番で木地全体をかける。
② サンドペーパーがけで出た粉は、布できれいにふき取る。
(2)半透明着色(スプルース色)ニス塗り
☆着色ニス剤
① 口輪部分をマスキングする。
② 柄を吊るした状態に保つ。
③ 半透明着色(スプルース色)ニスを薄く塗る。
☆乾 燥
吊るした状態で乾燥させる。
(下方に着色ニスがたれていないかチェック!)
☆サンドペーパーがけ
完全に乾燥したら、
320番でさらにかけます。
これは中塗りの下地調整となります。
(3)透明ウレタンニス仕上げ
中塗りの下地調整を終えたので、透明ニス塗りで仕上げます。
水性の透明ウレタンニスを使いました。
☆水性ウレタンニス仕上げ
① 薄く塗るのがポイント!
② 下方にたれてくるので素早くふき取る。
③ 乾燥させて、完全に乾いたらサンドペーパーがけ。
④ 二度塗りを行う。
(この段階では、染み込むニスの量が少ないです。
刷毛についたニスだけで十分でした!)
☆仕上り
若干、光沢が出てきました。
※この後、もう1回ニス塗りを行いました。
(上塗り仕上げ)
2.柄の取り付け
和包丁に多い「差込型包丁の柄の取り付け」は、
先に中子をハンディ式のバーナーで熱してから柄に一端、差し込みます。
これで中の木材が炭化し組織が潰れて、中子の形に沿った差し込み部分となります。
ぴったりはまり込むので、接着剤などで固定しなくても強度的に十分です。
(このようにして、8~9割ぐらい差し込みます)
次に映像のように、包丁を差し込んだら、柄の尻側の部分を叩いて入れます。
この方法は、大工道具の鋸(のこぎり)などと全く同じやり方です。
☆柄の取り付け
このようにトントンと叩いていくと自然に包丁が入っていきます。
映像は玄能で叩いていますが、木づちで行うのが正しいです。柄が割れたり、欠けたりしないように慎重に。
柄に包丁が納まりました。
少し、入り過ぎたかも・・・苦笑。
3.柄とマチの継ぎ目の防水処理
■ エポキシ樹脂を充填して、防水層(膜)をつくり水分の入り込みを防ぎます。
コニシ(株)のエポキシ樹脂
A剤、B剤を混ぜ合わせると硬化します。
完全な防水層となります!
4.砥ぎ
やっと、砥ぎの段階になりました。
平常の「砥ぎの手順」で砥ぎます。
(1)裏出し
#3000で、裏出しをしっかり行います。
とても重要!!
裏がしっかりしていないと切れません!
(2)荒砥ぎ
刃先の欠け等の直しもあり、刃線面が厚くなったので、荒砥ぎ(#320)から始めました。
かなり時間をかけて、刃先の厚さが切っ先から刃元まで均等になるように、慎重に調整して砥ぎます。
(3)中砥ぎ
中砥ぎ(#1000)です。
この砥ぎで、「返り」が少し出る程度まで砥ぎます。
すっかり、サビも取れます。
(4)仕上げ砥ぎ
仕上げは、#8000です。
☆☆☆ 包丁のリフォーム、終了です!!☆☆☆
以上で、フルコースの包丁修理・調整を終えました。
「切れ味も戻り、柄の感触もとても良いです。」とのご返事を頂きました。
ただ、ところどころ、納得のいかない部分もありました。
もっと腕を上げて、突き詰めていきたい! ・・・といったところです。