今回は、「出刃包丁」の砥ぎについて!
先日、2本の出刃包丁の砥ぎ依頼がありました。
まずは、チェックです。
2本とも、20年以上経っているとの事です。
■サビ(錆び)が結構入り込んでいる *特に刃先のサビは要注意!
■先端が丸い(鋭角でない)
■刃線が不規則? *なめらかな曲線になっていない
以上の点をできるだけ修正して、砥ぎまで持っていきます。
1 サビ落とし
全体をブラシで磨き、耐水ペーパーの番手の低いものから順番にかけていきます。
表面のサビを落としましたが、
中まで入り込んでいるサビは厳しいので、この程度で妥協しました。
問題は刃先です。
切れる刃先にすることが肝心です!!
2 しのぎ面・切刃の形づくり → 「ハマグリ刃」について!
■出刃包丁は、魚の骨も切る包丁です。
したがって、刃先の欠けるおそれがあるので、刃元側の刃は鈍角にして頑丈に仕上げます。
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■砥ぐ際には、切刃の角度を変えながら砥いでいきます。
魚をさばく時の切っ先側は鋭角に、骨を叩いて切る刃元側は鈍角にハマグリ刃に砥ぎます。
3 砥ぎを行います
(1)「裏押し」
#3000(3000番)の砥石で裏押しを行います。
裏すきが均等になっていないものの、刃先裏側の裏押しをきちんと確認します。
(2)「荒砥ぎ」
#320(320番)の荒砥石でしのぎ(鎬)面を砥ぎ、形をつくっていきます。
私はこの時、刃先の部分をなるべく砥がないようにしています。
荒砥石で刃先まで砥ぐと、刃先が弱くなり欠けてしまうのでは・・・と考えているからです。
映像のように、刃の先端部分は砥がないので、錆びて黒い部分がそのまま残っています。
この状態で、しのぎ面のサビが取れてしまいます。
(3)「中砥ぎ」
#1000(1000番)の中砥石で、しのぎ面から切刃、切っ先部分までを砥ぎます。
この砥ぎで、ほぼサビが取れます。
また、刃線が不規則だったので、刃先の出っ張っている部分を削り、引っ込んでいる部分はその前後を削って、刃線がなめらかな曲線になるように、感覚で削りました。
一般的には包丁を45°に傾けて砥ぎますが、ハマグリ刃をつくるには難しい・・。
まだ未熟なので、縦砥ぎで包丁をひねりながら砥いでハマグリ刃をつくりました。
■切っ先側を研ぐときは砥石に密着させるように、刃元側を少し持ち上げて砥ぎますが、これはほとんど、どの包丁でも必要な砥ぎ方です。
(包丁の切っ先部分の傾斜を見れば理解できます。)
■下の映像は、#1000の中砥ぎの状態です。
まだ、丸みのある「ハマグリ刃」にはなっていません・・・。
でも、刃先が出来上がりつつあります!
刃堺が現れ、鋼と地金(軟鉄)の境目が分かります。
(4)「仕上げ砥ぎ」
■#3000(3000番)を最初に、最後に#8000(8000番)で仕上げました。
下は#8000の仕上げ砥石ですが、砥ぎ汁や泥がたまると砥石の目詰りが生じて研磨力が落ちてしまうので、「名倉(石)」で砥石の表面を削って解消させます。
■#3000(3000番)で、ハマグリ刃に近づけるよう丁寧に砥ぎました。
「返り」もわずかに出るぐらいにして、刃先を#8000(8000番)で仕上げます。
(5)「もろ刃」
■出刃包丁は骨などを叩き切るために、刃元の方を頑丈な刃に仕上げます。
下図は、包丁の裏側になります。
刃元側の4分ぐらいを「叩き専用」に、残りの6分ぐらいを「さばき専用」に仕上げます。
■そして、刃元の叩き専用の部分を、「もろ刃」(両刃)に仕上げます。
■今回は、若干もろ刃(両刃)に仕上げましたが、もちろん「片刃のまま」で使う場合もあります。
(使う用途で、それぞれを使い分けていきます。)
4 終了
基本的な流れを基に、「出刃包丁」の砥ぎを行いました。
まだまだ未熟なので、さらに研究し、技能・技術を高めていきたいと思います!!