今回は、裁ち鋏2本の依頼がありました。
チェックしたら、
『切れない』,『全体的にサビあり』
という状況・・・。
30年ぐらい経つ、裁ち鋏だそうです。
1 はさみを分解します
中央の留め金(ネジ)をゆるめて、はさみを分解します。
小モンキースパナでしっかり挟んで慎重にゆっくり回します。このネジは真鍮(しんちゅう)で作られているので、回すときに、すべったりすると山が欠けてしまいます。
ネジ、ナット、ワッシャーがはずれますが、この4つを紛失しないように保管します。
作業中にコロコロと転がって、いくら捜しても見つからなくなってしまった時がありました・・。
2 サビ(錆)を取ります
ヤスリ・耐水ペーパーでサビを落として磨きます!
使用している耐水ペーパー
#180 , #240 , #320 , #400 , #600 , #800 , #1000 , #1500
#2000 , #2500 , #3000 , #5000 , #7000 , #8000 ,#10000
#12000
インパクト用
#60 , #180 , #320 , #1000
当工房では、耐水ペーパーとインパクトのヘッドに取り付けるタイプのものを主に用いています。頑固なサビは直接、砥石を使う場合も。
番手の粗いヤスリでサビを落としますが、要するに、ざらざらしたヤスリで表面にきずを付けることにもなり、そのきずを細かいヤスリで順番に取っていく・・・というイメージ!
最終段階になると、「磨く」という感じになってきます。
※ 例)#180 →#600 →#1000 →#2500 →#5000 → #7000 → #10000
この例の場合だと、#180から始めて#10000までの7段階の工程になります。
丁寧にやれば、結構時間を要します。
私は、4段階ぐらいの工程でサビ落としを行っています。
ただ鋼の中まで入り込んでしまったサビは、耐水ペーパーで取ることは厳しい・・・。
頑固なサビをグラインダー等で削ることもできますが、本来の形状が変わってしまうことや元の大きさよりも小さくなったり、薄くなったりしてしまうので、私はこの程度でサビ落としを終えています。
よく、「包丁砥ぎに出したら、薄くなったり小さくなって戻ってきた・・・」というようなお話も聞いたりします・・・苦笑。
砥ぎをすれば包丁の幅もだんだんと狭くなっていきますが、これは何年もすれば、の話です。昨日砥ぎに出したのが、今日は小さくなって帰ってきた・・となればビックリものですね。
3 はさみの小刃を砥ぎます
はさみの砥ぎは、「小刃」のみを砥ぎます。
包丁のように、裏押しなどはしません。
当HPの「鋏」のページでも紹介していますが、はさみの2つの刃の裏は「裏すき」をして曲面になっていて点で接しているので、包丁のように裏を砥いで面にしてはいけません。
■砥ぎは#1000の砥石から始めます。
包丁はかなりねかせて砥ぎますが、はさみは映像のようにかなり立てて砥ぎます!
刃の根元(下側)から、中央、先端と砥いでいきます。
中央部あたりまでは少しねかせています(①)が、先端部分になる(③)と、ほとんど垂直に近い感じで砥ぐことになります。これは、はさみには少しねじれが入っているので、それに合わせて砥いでいくとこのようになるわけです。
■仕上げは、#8000です。
刃先に若干「返り」が出てきたら、仕上げ砥石で砥ぎます。
裏は砥ぎません。なので、砥ぎはこれで終了です!
「返り」は、はさみを少しだけねかせて、1回だけ新聞紙にこすります。
「返り」が残ったとしても、はさみの刃を開いたり閉じたりするだけで返りはなくなります。
4 組み立てます
分解されて砥ぎ終えた鋏を組み立てます。
取り外したネジの入れ方を間違うと組み立てられないので、確認が必要です!
ネジ穴は2種類あります。ご存知でしょうか?
映像のように、上:丸いネジ穴、下:四角いネジ穴。
これが、とても意味あります!
ネジ本体、拡大映像です。
ネジの根元に円の部分、その上に四角の部分があります。
したがって、先に丸いネジ穴のはさみを先にネジに入れます!逆だと組み立てられません。
< ネジ締め付け手順 >
以上で、組み立てが終わりました。
はたして、切れ味はどうでしょうか・・・?
はさみが切れるかどうかを確かめるために、次のものを切ってみました。
①濡れたティッシュ
②サランラップ
③下着シャツ
濡れたティッシュやサランラップで試すのがどうなのかはよく分りませんが、my wifeが言うのでやってみました 。切れた、というより千切れたと言ったほうが適切かも・・・苦笑。よく分りませんね。(参考になさらずに・・・)
でも、下着シャツ2枚重ねの布がよく切れたので、良しとして下さい!